Le chiffrage des accords(1)

Le chiffrage des accordsという、和音の記法について書きます。
自分が通っている音楽院のFormation Musicalの授業(仏式ソルフェージュ)の授業でこの記法に遭遇するまで、授業や演奏の機会では目にしたことがありませんでした。
その後も殆どこの数字が何を表しているのか殆どわからなかったのですが、どのような仕組みなのかきちんと理解したいと思い、この記事を書くことにしました。

 しくみ

定義
16世紀から18世紀半ばごろまでに用いられた速記。この記法によって写譜の時間を短縮すること、過多な楽譜を避けることができ、その後より複雑な作品が生まれるにつれて衰退していった。現在では音楽教育において、和音の理論的構造を理解するために用いられている。

原理
  1. 全ての数字は、その和音の根音に対する音程の幅を表現している。
  2. 完全五度は5で表し、第三音は省略する。
  3. 数字の前に臨時記号がつけられている場合、その数字の音のみ適応する。
  4. 単独の臨時記号はいつも第三音に対してつけられ、第五音は省略。
  5. 斜線で打ち消された数字は減音程を表す。
  6. 十字(+)は同音を表す。
  7. 数字の後ろに水平線を引くことは同じ和音が保続していることを表す。 
(Jacques Castérède ,2007)
和音記号(ディグリー、Ⅰ、Ⅴなどのローマ数字)は「この調の中の音階で何番目の和音です」という記号で、その機能を知るためのものだと思うのですが、これはあくまで、その和音自体を表す記号のようです。
同じように和音を表すものに、コードネームがありますが、
コードネームは「この和音にはこの音が入っています」という記号であるのに対して、
この記法では、「この根音の上にはこの和音が乗っています」というのを表すというような違いがあります。
しかし、第三音の度数を省略するため、数字だけでは短三度と長三度を見分けられない場面が出てくるため、あくまで調性に則った記法であることがわかります。

そう思うと何か思い出してきました。通奏低音の楽譜です。
しかも仏和辞書にすら「通奏低音の和音記号」と書いてありました。単に番号をふること全般を指しているのだと思っていたのに。
(しかし、中にバロックの数字とは似ていながら違うもので、演奏のためには適切な訓練が必要であるという注意書きも、本の中に見受けられました。)

自分でなるべく噛み砕いた例


調号がなくわかりやすいハ長調で考えていきます。
五線の上にあるものがコードネーム、下にあるものが和音の数字です。

全て同じ構成音の長三和音による例

  

左…構成音がドミソの長三和音で、数字は完全五度の三和音なので、3
中…構成音がミソドで、左と同じ和音の第一転回形、数字はミからドの六度を表し6、三度は省略。
右…構成音がソドミで、こちらも同じ和音の第二転回、数字はソからミの六度の6と、ソからドの四度の4。

コードネームはCで、転回形はそれぞれ、Cと一番低い音を表したのオンコード(分数コード)になっています。
和音記号は全てⅠです。

 上の例と同じ数字で、同じ最低音の和音を作った場合

  

左…最初の例と同じ
中…構成音がドミラで、ラの短三和音の第一転回形です。
  コードネームはAm/C 数字はドからラの六度の6を表し、三度は省略。
右…構成音がドファラで、ファを根音とする長三和音の第二転回形です。
  コードネームはF/C 数字はドからラの六度の6、ドからファの四度の4を表します。

和音記号は、Ⅰ、Ⅵ(Ⅵm)、Ⅳです。

 

短三和音による転回形の場合。

和音記号は全てⅡです。
数字の説明については、音が違うだけで長三和音と同じです。

 

上の例と同じように、同じ最低音からの和音を作った場合

これを、ドから始まる和音と同じようにレから始まる和音を全く同じ数字でつくることは出来ません。こうなります。

和音機能は、Ⅱ、Ⅶ(Ⅶdim)、Ⅴです。
右…ソシレの第二転回形でG/D、数字も64
中…レファシの減三和音の第一転回形で、Bdim/Dになり、シがハ長調の導音となるため、6の前に+がつています。
  (ここで何故、三度を省略せずに3を書くのかまだ理解できていませんが、+6だけでは別の和音を示すようなので、そういうものだと思っておきます…理解できたら追記します)

+は、その調の導音が判明していない限り付けられないので、全く同じレファシの和音であったとしても、別の調であった場合は、+がつきません。

減三和音の転回形の場合


左が基本形、その第一転回形と、第二転回形です。
導音がシなので、中はシの音を表す6の前に+がつき、右はシの音を表す4の前に+がついています。
和音機能は全てⅦ(Ⅶdim)で、短調の減三和音(Ⅱ、Ⅱdim)であった場合は、また違う数字の振り方になります。


***

長調におけるの三和音の場合の数字の振り方は一通り把握できたので、ここで一区切りにして、短調の場合や四和音などはあした以降に考えたいと思います。

こうして理解しようとするまで、コードネームや和音機能を書くよりもわかりにくいと感じていたのですが、整理してみると、転回形であっても楽譜そのままの形で音の重なり方を把握することができて、わかりやすいように思いました。わたしは聞き取りをするときもコードネームを振っていましたが、コードネームの場合は転回形であっても根音がどの音か把握しなければいけないので、慣れるまでは難しいですね。
慣れてないので難しいです。

間違いなどに気付かれた方がいらっしゃいましたら、お手数ですがご指摘いただけますと助かります。

参考文献 Jacques Castérède(筆者訳) - Théorie de la Musique (P.135~137 Gérard Billaudot Editeur 2007年9月)