お金、払うの?払われるの?という問題。

ちょっと前に、こんなツイートをした。そのことについて書こうと思う。ちょっと長いのですが、もしよろしければ、お付き合いください。

ことのあらまし(今年の件)

わたしがフランスで音楽院の学生をやっている、現在の話。
「学生でやっている吹奏楽の本番があって、バリトンサックス奏者を探してる。お金は払われないけど、もしやりたければ…」
と、ある先生から連絡をいただいた。断る理由もないし、紹介してもらうことにした。

詳細を聞くうちに、参加費が必要らしいということがわかった。
という一件があった。今年の9月。ノーギャラだと思っていたら、参加費を払わなければいけなかったという例。

で、わたしは以前にも、似たような勘違いをしている。(そういえば偶然にも9月だったなあ。)



ことのあらまし(2年前の別件)

わたしが日本で音楽大学に通っていて、大学4年生だったときの話。
「バンドまだ活動していますか?もし可能であれば、出演していただきたいイベントがあるのだけど」
と、高校でお世話になっていた先輩から連絡をいただいた。(そう、高校時代はギター部だったんですよ。)バンドはやっていないけれど音楽は続けているので是非、というような返事をして、主催者の方に紹介してもらうことにした。


ほどなくして、主催者の方からメールが来た。送っていただいた詳細には、日付と、演奏時間(転換込み○○分、○曲指定)、出演料○○円と、場所が書いてあった。その場所は屋外で、私もよく行く場所で少し目立つ場所だった。


大学生の頃の本番って、個人的にもらった依頼でも、大学の人間関係を使って巻き込んでいく感じでした。そうやって、あまり経験豊富じゃない後輩も、積極的に誘ってメンバーに入れていく習わしみたいなものがあったんです。すこし。


で、今回は、高校時代お世話になった先輩に紹介してもらった依頼だし、人目に付く場所だし、経験豊富な人を選ばなければと思った。なので、その間近で一緒に演奏したことがある、信頼の置ける先輩ふたりと後輩ひとりに、お願いした。(入っていた予定を動かしてくださり、有り難かったです。)
それから、打楽器の同級に一緒にやってほしいとお願いした。私にとって彼は、知る限りの同世代の人の中で、一番好きなドラムやカホンを奏する人だったのです。


そうして、わたしが個人的に、いちばん一緒にやって楽しくて、いちばん内容にも自信を持てるメンバーをあつめた。(あまりお礼を渡せないけれど、こう思っているので、お願いしますと頼んだ。と思う、ここは記録がないので記憶しかない。)
わたし史上最強のメンバーがそろったので、お引き受けすることにした。


それから主催の方とは、メンバーのフルネームを教えてくださいとか、機材のこととか、曲とか、いろいろやり取りした。演奏するメンバーで曲決めたり合わせしたりした。


その日にちが近づいてきて、タイムテーブルとか、注意事項のメールをもらった。「雨天中止の場合、出演料の半額を頂戴いたします」と書かれていて、ああ雨が降っても半額もらえるのね、すごい良心的だなあ、と思った。
(流石にバカだった。どう読んでもそんな風に受け取れないよ。)


当日行った。主催の方と挨拶した。わくわくしながら演奏した。音量バランスは割とぐちゃぐちゃだった。演奏が終わって、もう帰りますありがとうございました、と話したら、ありがとうございました、じゃあ清算を、という話になった。そこで初めてわたしは「あ、これ、お金、払うやつか!」と気づいた。


奇跡的にお金を持ち合わせていた…のではなく、メンバーにお礼を渡す時にあらかじめ崩したお金を用意したほうがが楽だと思って、人数分の封筒に分けたお金を入れて持っていていたんですよ。恥ずかしいけれど本当です。そこからお金を取り出して、主催者さんに支払った。びっくりした顔とかせずに平静を装って。


はい。


あとは箇条書きにしていく。


  • そのあと先輩たちにも、こういうことだったので、お金払ってくださいと頼んだ。
  • でもこれはわたしのミスなのに、先輩たちに払ってもらうのが申し訳なさすぎて、前言撤回でそれはやめた。(自分のお財布からギャラ出すとかすればよかったけど、できなかった。ノーギャラで申し訳なかった。)
  • これに誘ってくれた高校の先輩にも、こんなつもりではなかったと話したところ「払ってやるのが普通だったから気づかなかった」と謝られた。申し訳なかった
  • そのあと別日の同じイベントを既にに引き受けていたけれど、断ることにした。引き受けておいて断ることになり、申し訳なかった。
  • その翌日、私は実習の振り替えがあったけれど、メンタルがやられているから行けない、みたいなメチャクチャな理由で休んだ。(食べたものが全部消化されずに下痢になって出てくる謎の症状に襲われて家から出られなくなってしまっていた。食欲もなかった。)


主催の方を恨んでいるという気持ちはないです。ただ自分がなさけなかった。お金出すのが普通だという風習があるということもやるせなかった。
ギャラを払えない案件に、わたし史上最高のメンバーを集めてしまった、ということが、とても複雑だった。いまもこのせいで自己嫌悪に陥るし、ちょいちょい思い出して泣いてしまう。弱いかよ


対策

以上の件から、事前の確認が大切だということを学んだ。


イベントの件は、依頼されたし、「出演料」と書いてあった。でも、依頼をされたからと言って仕事とは限らないし、出演料がギャラとは限らない。お互いの常識が違うので、事前の確認が大事。確認に確認を重ねることが大事。




お金を払って演奏することが悪なのではない

でもお金を払って演奏することの意味もよくわかる。コンクールを受けたりもしている。コンクールは、「著名な先生に聴いてもらう(あわよくば講評を頂く)」「良い悪いの評価を与えてもらう」という機会を、買っている。


今年の吹奏楽の件も、「吹奏楽で演奏する」という、一人ではできないことにお金を出す、んだと思っている。指揮者や、場所代、楽譜代、いろいろお金がかかることは、わかる。だからまだ始まってないけど、断るほどでもないと思って、そのままやる。
2年前のイベントの件も、結果的に、普段やらない場所でやることに払ったお金だと思って、自分の中では納得している。


音楽もお金も人と人を繋ぐものだと思う

わたしはノーギャラで演奏することが多かったし、今は主にノーギャラです。共演者にノーギャラで演奏させてしまったことも、ありました。ごめんなさい。
だから、とにかくお金ほしいと言っているわけじゃない。でも、演奏する人がお金を払うのが普通、というのはちょっと悲しい。 私は何か、お金をもらうことが不可能な世界からお金をもらえるという夢を見ているんだろうか。そうでもないと思う。

 
予想にすぎないけど、2年前のイベントの件は、もともとここを借りてイベントをやったら楽しいだろうな、というところからスタートしているんだと思う。たぶん。
その場所で演奏がしたい人で、費用を分担する。何度か定期開催していくと、分担する相手がいなかったりして、そこにわたしが呼ばれただけなのだ。そういう出演依頼。だから、はじめから、演奏者がお金を払っている、演奏者のための演奏だ。


ライブハウスでのチケットノルマという名の参加費なら、頑張って売れば回収できる。つまりお客さんが演奏者にお金を払ってくれる、お客さんのための演奏だ。
ライブハウスでない場合は?じゃあもしも、もしも運よく、地元のお店や企業に、スポンサーになってもらえたら?お金を払ってもらうことで、お客さんのための、協賛店や協賛企業のための、演奏になれるじゃないですか。
そうやって、すこしずつ誰かに負担してもらうことで、自分の音楽に責任みたいなものが生まれるんじゃないですか。


自分のためだけに音楽をやるなら、他人を巻き込む必要なんてないです。やみくもにやったって擦り減っていくだけだし、擦り減らせてばかりしていたら、続かないですよ。なんのための音楽ですか、