「音楽は会話」という件

「音楽は会話」というけれど、本当にそうだと思う。

会話は相手がいて成立する。相手の言っていることに対して自分が返したり、自分の言っていることに対して相手の返答を待ったりする。相手の主張をくみ取らなければ、会話は成立しない。

言葉だけではなく、テンポよく相槌を打つことも、相手の顔を見るといった姿勢もまた大切だ。
 先日アビシャイ・コーエン・トリオのライブに足を運んだ。前から知っているアーティストではあったものの、実際に生で演奏を聴くのは初めてだった。
すごいと思ったことは、アビシャイ・コーエン氏の体の中で音楽が完成していること。それぞれの楽器が、音楽を完成させるために上手く役割を果たしていること。
完成する音楽の形をくみ取って、相槌を打つように伴奏を弾く。タイミング良く自分を主張する。お互いに顔を見て、笑ったり動いたりしながら演奏する。会話そのものだった。
わたしは「ドラムがいる編成ではドラムが主導権を握ってしまうものだ」という思い込みを持っていたけれど、その思い込みはこの日崩れた。
ドラムは主張しつつも寄り添っていて、ピアノとベースで作られた音楽を広げることに重きを置いているかのようだった。かっこよかった。
音楽は会話だというけれど、会話を円滑に進めるにもコツややり方がある。
アンサンブルがうまくいかないときはある。そんなときは、会話のどんな要素が足りないのか考えたい。